犯罪処理の難しさは、昔から変わらず「御宿かわせみ 幽霊殺し」
本作は、御宿かわせみシリーズの五冊目です。
「秋色佃島」は、収録作の中でもハードなお話。
宿のスタッフが、無料で配られた饅頭を食べて、腹を壊す事件が。
饅頭には毒が盛ってあり、名前を騙られた菓子屋は、風評被害で大打撃を受けます。
しかしそれは、八丁堀役人を狙った計画でした。
ヒロインのるいさんは、騙られた菓子屋を見舞う為に出掛けますが、遣いを名乗る男に意識を奪われ……。
同じ頃、主人公や役人の友人は、事件の裏に辿り着いていました。
かつて、金持ちの息子が、近所の娘を次々に強姦した事件がありました。被害者は、世間に漏れることを恐れて泣き寝入り。犯人の親が、金で片付けてしまいます。
そこで犯人を野放しにせず、捕らえたのが、るいさんの亡き父でした。被害者の名前を極力出さないよう気をつけましたが、どこかから噂は漏れてしまうもの。
一人の娘が、世をはかなんで首を吊り……その許嫁が、役人を恨んで、娘であるるいさんを拐ったのです。るいを犯して殺す、という男。同じ頃、主人公達は必死でるいの行方を追いますが……。
犯罪者を野放しには出来ない。けれど、その為に不幸になる人もいる……現代でも変わらない、性犯罪を扱う難しさ、デリケートさを感じる話です。