若者と年長者、昔も変わらず「御宿かわせみ 酸漿は殺しの口笛」
本作は人気時代小説、御宿かわせみの七冊目です。
収録作品の中で、特に好きなのは「雪の朝」でしょうか。
珍しく、江戸の町が大雪に見舞われた年。
ヒロインが営む宿に、一組の男女がやってきます。
兄妹と名乗っているものの、百戦錬磨のかわせみメンバーは、すぐに彼らが駆け落ち者だと見抜きます。同じ頃、厠を借りるふりをして、大店の金を盗む女が現れて……。
駆け落ち者の男女を心配して、色々と話を聞く番頭ですが、まあ二人とも考えが甘いというか、危なっかしいというか……。
商売のことは分からなくても
「やってみなければ分からない」
と強気。
親の金を持ち出したというが、その金を稼ぐのにどれだけかかるか、知っているか?と役人が言っても、説教は要らないと言わんばかり。
恋に浮かれて、まだ現実の厳しさが分かっていない様子。
大変なことになる前に、と周囲が心配しても、本人達には煩わしいだけのようで……もう放っておけ、と放置したら、毎日江戸見物に出歩きますが、そこで例の犯罪現場に遭遇して……。
ショックでへこむ若者二人がおかしいような、気の毒なような。
人生のやり直しについて、考えさせられる話です。
そして、犯人は意外な人物でした。
テーマは
「若気の至り」
と言えるでしょうか。