江戸のダメ親父「御宿かわせみ 山茶花は見た」
本作は、平岩弓枝先生の人気シリーズ、御宿かわせみの十二冊目です。
表題作をはじめ、今回もサスペンスあり、ロマンスありと盛りだくさん。
中でもお気に入りなのは、「ぼてふり安」というお話。
ヒロインが営む宿に出入りする、魚売りの安。
真面目一辺だった彼が、あろうことか、とある娼婦に入れあげてしまい……しかも裏にヤクザの紐がついている、評判の良くない女だとか。
周りが何を言っても耳に入らない安は、女を身請けする代わりに、自分の一人娘を売ると言い出します。
かわせみの皆は怒ったり呆れたり、なんとか娘のおいちが売られないようにと、心配しますが。
同じ頃、江戸の街には辻斬りが現れて……。
おいちを救う為、仮にも与力の弟である主人公が、物盗りを装って身請け代を奪う計画を立てます。
そうすれば、その金でおいちを救い出せる!と。
しかし、いざ実行に移すとなると、なかなかキッカケが掴めず。そうこうしているうちに、目の前に噂の辻斬りが現れて……。
東吾の計画の顛末と、おいちのその後にご注目。
そして愚かな行為のせいで、女も娘も失った安の姿には、こっそり溜飲が下がります。
目が眩んで、人として一番大切なモノを手放してしまった安。彼の姿には、現代人にも考えさせられます。