殺人犯は読者だ!「最後のトリック」
この小説はミステリー界で最大の難関とされていた「読者が犯人である」というジャンルにチャレンジした作品です。
ある日、ミステリー作家である主人公の元に差出人不明の手紙が届きます。
それは「読者が犯人であるという話を2億円で買わないか?」という内容でした。
これまでミステリー小説には幾多のトリックがありましたが、「読者が犯人」というトリックはそれまで無く、しかもそのトリックは難関と言われていました。
「本当にそんなトリックがあるのだろうか」と主人公は考えます。
主人公が新聞に連載している最中、またもや差出人不明の手紙が届きます。
それは「読者が犯人」というトリックを差出人が持っている可能性を濃厚にするとともに、差出人の「覚書」なるものがありました。
その覚書は差出人の生い立ちを語っているかと思われる小説のようなものでした。その手紙について友人に相談しても友人は「こんなのありえない」と軽く流します。
しかし手紙はまた届きます。
そういった物語の進行の中で、やがて「この物語は読者と同時進行している」ということが明かされます。
読者が小説(最後のトリック)を読んでいる時、物語の中でも同じように時間が進むのです。
差出人は「自分の作品(物、作文)を他人に見られると、体に異変が起きるという体質の持ち主でした。この小説内で差出人の手紙を新聞の連載で公にされ、また書籍化などになって不特定多数の人に読まれたら「おそらく私は死ぬだろう」と予測していました。
そして差出人の予測通り、差出人は死体となって発見されました。
この差出人を殺したのは読者である私たちなのです。
私たちが読まなかったら、彼は死なずに済んだはずなのです。
ただし、このトリックには一つ穴があります。
それは「読者には犯行の動機がない」という部分です。
この「動機」を埋めることができたならば間違いなくミステリー史上に残る作品になると思います。